オムライス

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夏休みや冬休みはゆりちゃんの家に泊まりに行くことが定番になっていた。
休みの後半はゆりちゃんが私の家に泊まりに来た。

毎日が楽しかったことを覚えている。

一度だけ、想定外のことが起きた。
ゆりちゃんの家に、私の知らない友だちが遊びに来たのだ。

ゆりちゃんは幼い頃から人気者だったから、当然、私の知らない友だちはたくさんいるだろうと思っていたが、会うのは初めてだった。

ゆりちゃんが私に友だちを紹介する。
「この子、お友だちのいずみちゃん!」

私の知らないゆりちゃんを知ってるというだけで、何ともいえない嫉妬心が湧いた。
そのままどうすることもできず、3人で遊ぶ流れになった。

仲よく遊ぶゆりちゃんといずみちゃん。
ふたりの空気に入っていけない私……。

気まずい空気の中で、ゆりちゃんの母親が子どもたちを呼んだ。
「お昼ご飯だよう!」

私たちは食卓へと向かった。
テーブルの上には赤いケチャップがかけられたオムライスがあった!

私はわくわくした。
こんなきれいなオムライスは見たことがなかったのである。

当時の私の家には、母の自営で働く女性たちが住み込みでたくさんいて、こういった普通の家庭での食事が出ることはなかった。子どものためだけに作る料理はありえなかったのだ。正直にうらやましかった。

「いただきます……」
オムライスにスプーンを入れ、ひとくち、ふたくちとほおばる。
お口の中で卵とチキンライスの織りなすハーモニーが、体験したことのない幸福感へと私をいざなった。

「お、おいしい……」

かみしめながら幸福感を味わう。
気づけばペロリとたいらげていた。

ゆりちゃんの母親が聞いてきた。
「さよちゃん、珍しいね。いつもはご飯あんまり食べないのにおいしかった?」
私はすかさず首を縦に何度も振った。

オムライスのことがあまりにも衝撃的で、その後3人で遊んだはずなのだが忘れてしまっている。
おそらく私はボーッとしていたにちがいない……。

気づけばいずみちゃんはもういなかった。

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