心のコンクール

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私の家には母の弟子8~10人が住み込みで働いていた。そのため、家族も合わせると自宅に13~15人はいたことになる。

母は着物業界で肩書がある人だった。
コンクールでは母が審査員になる立場だ。弟子たちはもちろん全員参加して優勝を目指さなければならない。
全員仕事をしながら、コンクールのために毎日深夜まで猛練習していた。

コンクール当日、ただならぬ空気の中、母と弟子全員が出かけていった。
日が暮れて帰ってくると、ひとりだけトロフィーと花束を持っていた。
――おっ? これは、優勝か?

かなりの人数が参加するコンクールで母の弟子のひとり、えみちゃんが優勝したらしい。
「おめでとう!」「おめでとう!」
みんなに言われ微笑むえみちゃん。私も思わず「おめでとう、よかったね」と声をかけた。

その瞬間、「くやしい⋯⋯あんなにがんばったのに⋯⋯」とどこからともなく声が聞こえた。

――だ、だれ?
はっきりと聞こえたので思わず辺りを見回した。
でも誰も話していない。
――な、なんだ?
「もう、これで家には帰れないから死にたい」
――えっ? えええっ!? だ、だれ?
お祝いムードのなかでただひとり、無表情でうつむいている。

――あっ! この人だ!
えみちゃんと同期でかなり仲のいいみきちゃんだった。顔は無表情なのに、心の中では泣いていた。

私は母に近づいて思わず言ってしまった。
「お母さん、お母さん、1位の人はいいけど、ちがう人のほうが悲しいんだよね。そこちゃんとわかってあげてね」
母はキョトンとした。私は小学3年生だ。当然である。
変なことを言う娘として警戒する母は笑いながら、私をその場から追い払った。

母は何もできなかった。私の言葉の本当の意味がわからなかったのだろう。

あとでちがう誰かから聞いた話によると、みきちゃんはいいところまでいって、あと一歩のところで落とされたらしい。

もちろん当日の私は知らなかった。

それから私は母が思い出すたび恨み節のように繰り返し、
「あの時、なんであんなこと言ったの?」としつこく問い詰められるようになった。
私も同じことを繰り返し答えた。「だ、か、ら、何度も言ってるじゃん! 聞こえたのっ!」
すると決まって母は「あんた、気持ち悪いからそんなこと言わないで!」と言われた。

――じゃ、聞くなよ
といつも私は思う。

子どもの私にはわからないことだったが、今、思えば、母は面目丸つぶれの気持ちだったのだろう。
実際、母は悩んで近所の霊能力者、大本さんを呼んで相談していた。
そこでは、私のことを「頭がいいから人の気持ちがわかる」と、大本さんが説明していた。
私も霊能力者なのに⋯⋯(笑)

 

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