見えない友だち

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

小学生になって間もないころ、近所に廃材置き場があった。

かつては養護学校に通う子どもたちとその保護者が集まり運動会やレクリエーションなどが催され賑わっていた。
移転したために校舎が取り壊され、しばらくのあいだ廃材が野ざらしにされていたのだ。

その敷地はすべて立ち入り禁止だったが、廃材は校舎が建っていたところにまとめられていた。養護学校のグラウンドとなっていたところで多くの子どもたちがボール遊びなどをする。

私はグラウンドのほうで遊ばずに、廃材置き場のほうで遊ぶ子どもたちといつもいっしょにいた。

廃材置き場は秘密基地を作る格好の場所だ。遊び仲間のあいだでは秘密基地を陣地と呼んでいた。校舎の裏に植えられていた木に登り、陣地を作って隠れている子どもを見つけては陣地へ入っていってその子どもに声をかける。見つかった子どもは別の陣地を新たに探すという遊びを繰り返していた。秘密基地とかくれんぼを合わせたような遊びだった。

校舎の入り口だったところにイチイ(北海道方言でオンコ)の生け垣があって、私はいつも赤い実をいくつか手に取ってから木に登り、木の上で実を食べながら陣地の中にいる子どもを探した。
そういえば、この実が食べられることを知らなかったし、誰からも教わっていない。特段、美味しかったわけでもなかった。

今になって思えば何が楽しいかわからない遊び方だが、当時の私は毎日、楽しかった。

グラウンドのほうで遊んでいた子どもたちが急に帰ってしまった日があった。不思議に思い、いっしょに遊んでいた友だちに聞いた。
「どうして、みんな帰っちゃったの?」
「誰かが足に釘が刺さって、帰ったみたいだよ~」

――そうなんだ⋯⋯。
そう思いながら、まだ陣地遊びの真っ最中だったので、私はかまわずそのまま続けた。
私は繰り返しイチイの実を手に取ってから木に登り、赤い実を食べながら陣地に隠れている子どもを探しては声をかけて遊んだ。

日が暮れてくると、母が私を迎えに来た。
「さより! あんた、なにやってるの!」
立ち入り禁止区域で遊んでいた私は叱られると思い、とっさに弁解した。
「だって、みんなも遊んでるもん!」
「どこに?」
母はけげんな顔で問いかけた。

私は仲間を呼ぼうとした。
――あれ? なんだったかな? 私⋯⋯名前⋯⋯知らない⋯⋯。
気がつくとさっきまでいっしょに遊んでいた子どもたちがいなかった。

私は叱られながら母に連れられて帰る。
毎日、陣地遊びをしていた友だちとはなぜかその後、二度と再会しなかった。

今になって振り返ると、木に登っていたのは友だち同士で交代していたわけではなく、私だけだった。名もなき子どもたちは私に見つけられて遊んでいた。私だけが勝手に陣地遊びをしていただけで、その子どもたちにとってはただのかくれんぼだったのかもしれない。

イチイの実のことを今日調べていると、果実は食べられるが種は猛毒であることを知った。私はそんなことも知らずに種も平気で食べていた。

そういえば、このときを最後に、私はイチイの実を一切食べた記憶がない。

もしかすると、私はあの世に片足を踏み入れていたのかもしれない。
だから、私はあの世に隠れている子どもたちを見つけられたのだろうか。

 

↓子どもみんなそうなの? と思ったらクリック1発ずつお願い!
にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 札幌情報へ 


臨死体験、霊界、神霊、心霊、恐怖体験
妖怪・幽霊

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly


コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


関連記事


おすすめ記事

最近のコメント

札幌市ランキング にほんブログ村 地域生活(街) 北海道ブログ 札幌情報へ